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御堂筋note magazine

Vol. 11

経営理念の作成と経営の方向性

(1)経営の理念の持つ力

経営理念の持つ力について、松下幸之助翁は、「経営理念を作成して、経営に一本筋が入った」、ということを述べられています。そういう意味で、経営理念は経営に対し精神的なよりどころとなるバック・グラウンドを提供します。会社を経営していくについて、経営理念はなくてはならないものなのです。すでに経営理念が会社にある場合には、まずそれをじっくり味わい、経営理念に込められた思いをしっかりと心に刻み付けます。また、まだ作られていない場合には、ぜひ自らの経営理念を作って下さい。

(2)経営者は経営理念の基になる考え方をどう醸成していくか

経営理念は、経営者の人生観、人間観、社会観、仕事観が経営の場で、言葉として結晶化され表わされたものですから、そこには経営者の価値観が込められています。そしてこうした価値観は、外部の研修に参加し、立派な方のお話を伺い、本を読みながら知識として学んで習得していきます。

しかし学んだだけでは意味がありません。それが日常の行動の基盤として身についていかなければなりません。そのためには実践が必要になります。実践は最も我の出やすい家庭で行っていきます。親子、夫婦の間で健(すこ)やかな習慣と関係を築いていくのです。そして、こうした習慣を会社でも社会生活でも実行して行きます。その意味で、家庭は人間関係の原点であるといえます。

また、日常生活でのすべての行いは、人間性を高めや価値観を磨いていく訓練と修行の場であるといえます。禅の考え方においては、このような考え方が重視されていると聞いています。私の勉強した日本創造経営教会の創造経営教室でも、他人から信頼される自分を築くために、基準創造行動の実践ということが強調されています。基準創造行動では、4つの項目を重視し、日常生活での実践を求めます。

ⅰ あいさつ(他人を認める気づきの原点)
ⅱ 早起き(時間の意識と認識即行動の行動力を身につける)
ⅲ 連絡と相談
ⅳ 報告と後始末

イエロー・ハットの鍵山さんが実践されておられるように、掃除も素晴らしい実践修行のひとつです。心を込めて使う人の気持ちに立ってお掃除をする。実にすがすがしい気持ちになるものです。
こうした修練を通じて、あなたの経営に対する基本的な考え方を形作っていくのです。

(3)経営理念の要件と作り方

経営理念を作るに際しては、まず色々な会社の経営理念を調べてみて下さい。今どき、少しまともな会社なら経営理念くらいは作られているでしょう。そのとき意識して見ていただきたいことは、その経営理念が、その会社に固有のユニークな内容のものであるかどうかということです。もし、どこの会社にでも当てはまるようなものであるならば、少しばかり感心できません。
前出の宮本先生は、経営理念の要件として次の3点を挙げておられます。それは、

ⅰ 社会性~どのように社会に貢献するか
ⅱ 経済性~収益力の源は、その事業の卓越性にある、どのようにその卓越性を求めていくか
ⅲ 人間性~社員の幸福と満足をどのように実現していくか

の3点です。
また、旧アーサー・アンダーセン・コンサルティングがまとめたミッション・マネジメントでは、経営理念の体系を欧米流に次の3つにまとめています。

ⅰ ミッション・・・会社の目的および事業を表現しているもの
ⅱ ビジョン・・・会社の願望を表現しているもの
ⅲ バリュー・・・会社の価値観を表現しているもの

この中で全体のベースになるものは、やはりバリューです。というのは、経営者の基本的な価値観があって初めて、事業に対する目的や願望が出てくるからです。

それでは、どのようにして経営理念を作っていくのでしょうか。経営理念は一日でできるものではありません。出てきたアイデアを、寝かしながら、繰り返し吟味し、検討して作っていきます。言葉の口調、リズム、言葉の韻、個々の使う言葉の選択、声に出したときの感じなど、色々な人の意見を聞きながら決定していきます。その場合もちろん上で述べたような要件を満たしているかを良く考えておいて下さい。

経営理念ができたら、上質な紙に印刷しあるいは揮毫(きごう)し、きちんとした額に入れて、社内の必要な場所に掲げます。しかし経営理念は掲げただけでは意味がありません。それを社員に徹底して、経営理念に沿った行動が自然にできるようになるまで、訓練をしていかなければなりません。例えば社員にカードにして配り朝礼や会議で唱和したり、また制定の趣旨として経営者の思いをまとめたものを説明したりしていくのです。しかし、最も必要なことは、日常の指導でまた経営計画の策定やその実行チェックの場で、繰り返し繰り返し口の端にのせて、実践との関係性を述べていくことです。

(4)5サイクル経営と計画経営の実践手順

5サイクル経営も宮本先生が創られた言葉です。先生は、経営を日常業務だけの「最低の経営」、計画はある「並みの経営」、理念の存在とそれの具体化ができている「極上の経営」に分けられました。そして極上の経営をしていくためには、経営は理念から始まって、それを戦略に落とし込み、戦略に従って実行管理が行なわれることが必要であると述べておられます。

つまり経営理念に基づく経営の実践です。私も全くその考え方に同感で、「計画経営」の実現ということを口をすっぱくして話をしている次第です。
実際の経営計画の策定はあらためて述べることにしますが、ここでは経営体制の整備も含めあらかたの手順をお話しておきます。

ⅰ 基本指針の制定
経営理念の作成と事業構想の策定については今までに述べてきました。こうした前提条件に従い、基本指針を作っていきます。基本指針とは、仕事をしていく上で大事にしなければならない考え方、守るべき規範です。基本指針をもっと具体化したものが業務指針といわれ、さらにそこから業務マニュアルや各種規定に下ろされていきます。
基本指針では、営業活動に関するものを始め会社の重要な活動に対して、社員の行動基準を定めておく必要のある分野について、経営者として守らせるべき考え方をまとめていきます。これらは、経営を担い始めたときに精魂を込めて作成して下さい。なぜなら、一旦その時期を逃すと、忙しさにかまけて二度と作る機会を逸する可能性が高いからです。一度作っておけば、あとは毎年見直すだけでメンテナンスができるようになります。基本指針に盛り込むべき項目としては11の項目があります。

項目 内容
営業活動 お得意先格付、訪問基準、訪問時の活動、マナー
品質管理 品質に対する基本方針、品質の作り込み、ISOマニュアルへ
クレームの対応 初期対応、再発防止策
来客への対応 対応手順、電話の取り方、対応マナー
業務上のコミュニケーション 意思疎通の注意点、連絡の方法
業務の自己管理 年次の業務サイクル、月次の業務サイクル、1日のサイクル
会議に関する事項 一般的注意点、会議の種類、進行の注意点
環境整備 掃除、机の整理、棚の整理、お花の配慮
自己啓発 研修への取組み姿勢、外部研修への参加、読書の指示
情報化 業務でのPCの活用、情報リタラシー開発、情報の取扱い
リスク管理 報について、賠償の責任、業務上の不正

こうした基準は、日常業務における社員の行動指針となるため、経営者自らが特別に時間をとって、また日常の管理活動の中でしつけていきます。

ⅱ 経営計画の策定
このように、会社の基本運営指針が明確になれば、次に事業構想に従い経営計画を策定していきます。経営計画は中期から年度の計画に落とし込みます。計画は体制や、重点行動計画、損益予算などの数値計画などからなっていますが、特に大事なのは行動計画です。これらは各幹部社員の行動計画書として5W2Hで具体化され、毎月の行動に反映されるようにまとめることが要求されます。

ⅲ 経営計画の実行チェック体制
計画が作成されれば、それを会社全体に周知させるため経営計画発表会を実施したうえで、毎月の実行管理のしくみを作り、動かしていきます。ドラッカーも言っているように、ここがもっとも骨の折れるところなのです。毎月のレビューの場を設定し、飽くことなく計画の実行、実現に向けての活動を行なっていくのです。その具体的な進め方は場所を代えてまたお話します。

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今日のまとめ

経営理念は経営の骨格をなすものです。その会社に固有の社会性・経済性・人間性の要素が盛り込まれ、経営計画などを通じてその実現へ取り組むことが望まれます。

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