Vol. 18
ネットワーク作り
中小企業におけるネットワークの重要性
ビジネスの進め方として、自社でその機能を備えるいわゆる内作と、自社では行なわず社外にその機能を依頼する外注という2つの機能の果たし方があります。企画、研究開発、製造、販売、マーケティング、アフターサービス、間接業務といった経営機能のほとんどすべての機能でこうした選択が可能です。特に中小企業では人やノウハウなど社内の経営資源に制約が多いため、社外での機能補完が大切になってきます。
この場合何を内作して、何を外注するかの判断基準は、どの部分でわが社が付加価値を産み出しているかをしっかり見定めることです。付加価値を産み出している部分は内部で創り出し、ノウハウを蓄積し保護し育成していく必要があります。
中小企業においては外注への依存度合いが高いがゆえに、どのような人や組織に機能の補完を依頼するかが、とりわけ重要になってくるのです。一般に外注に出すのは、(1)わが社でその機能を持っても稼働率が低いか変動的で投下資本をフル活用できない、(2)ノウハウや運営が専門的でおいそれとは取得や手出しできない、(3)わが社がその機能を担当しても付加価値が取れないといった機能です。そして外注に出すには何よりも信用の置ける一流のところを選ぶことが大切です。
サプライチェーン、バリューチェーンという言葉があります。ビジネスで何かの商品・サービスを生産者から市場のユーザーに届けるためにビジネスプロセスにおいて様々な機能・業務プロセスが必要です。競争戦略の大家であるポーター教授はこれを下のようにまとめています。要はこうした機能の中でどの機能・プロセスを担当し、また外注するかを考えていくわけです。
また、経営では様々な局面で人脈が活きるものです。新しい事業の展開、お客さまの紹介、コラボレーション、いざという時の助けなど、豊かな人脈を持っていることの強みは計り知れないものがあります。この際皆さんはどれくらいの人脈を持っているのかきっちり棚卸しをして、必要なネットワークを整備して行って下さい。
人と人が直接交わることのものすごい効果
さて人と人とが情報の交換をして意思疎通し交流していくコミュニケーションの方法には様々な方法があります。例えばメール、電話、ファックス、手紙、会って直接話しする(ダイレクト・コミュニケーション)などです。
これらの方法にはそれぞれ利点と欠点があります。例えばメールはいつでも好きなときに情報を相手に発信し、相手の時間を邪魔することなく返事を期待できます。しかし一方では即時性がなく、また相手の顔を見なくて済むため表現が過激になる危険性があるなどです。従ってこれらの様々なコミュニケーションの方法はその性質に応じた適当な使い分けが大事になります。
中でも人と人とが直接交わることはもっとも労力が要りますが、その代わりものすごいインパクトがある方法です。ですから重要な意思決定、微妙な感情を伴なう問題などでは特に必要なコミュニケーションの方法です。そして人と人とが会うことで双発的、創発的なアイデアの生成、進化、展開、発展がすさまじい勢いで生まれます。それゆえ経営者は積極的に外部に出て、いろいろな人と交わることが必要なのです。なぜならば経営者は想像力が要求されるからです。
しかし外に出ても同業者ばかりとか、同級生ばかりとか同じ穴の狢(むじな)とばかり付き合っていてはだめです。全く違う業種、環境、考え方の人と交わることが絶対に必要です。なぜならば異質なものの出会いと交流、「違い」の中でこそ、新たな価値が生まれるからです。そこでせっかく外に出て、外部交流をするのであればバリエーションに富んだ団体やグループに参加することをお勧めします。
どのようなネットワークが必要かを洗い出す
とはいうもののどのような外部交流をすべきかは、あなたがどのようなネットワークを必要とするかが基礎になります。これには次のようなものが考えられるでしょうから、それらの中から必要なものを選定していって下さい。
№ | 人脈・ネットワークの種類 | 代表的な人・企業・団体・グループ |
---|---|---|
1 | 顧客 | 得意先の組織化・・・ |
2 | 仕入先 | 仕入先の組織化・・・ |
3 | 地域 | 商店会、町内会、子供会、PTA・・・ |
4 | 同業者 | 業種団体、各種研究会 |
5 | 法務サービス | 弁護士、税理士、司法書士、弁理士、行政書士・・・ |
6 | ビジネス支援 | 医者、金融機関(銀行、証券、リース)、コンサルタント(マーケティング、研究開発)、研究機関(大学、公的)、行政、政治家、コンピュータサービス、不動産業者、保険代理店、FP、なじみの飲み屋など |
7 | 潜在顧客・仕入先・取引ネットワーク | 商工会議所、各種経済団体、JC、中小企業家同友会、異業種交流会、各種社交団体・・・ |
8 | 趣味 | 同好会、スポーツクラブ・・・ |
9 | 社会奉仕、名士活動 | 商工会議所、ロータリークラブ、ライオンズクラブ・・・ |
10 | 情操・研鑽・学習 | 倫理法人会、盛和会、経営人間学講座、各種宗教、思想的学習団体、継続的研修団体、・・・ |
11 | 個人の人生蓄積 | 同窓会、OB会・・・ |
ネットワークをどのように見つけ活かすか
さてネットワークを築いて行くためには、積極的な情報の探索が必要ですし、きっかけができた後の積極的な態度が必要です。なぜなら団体のメンバーとして心理的に認知され、そこに加入していて居心地良く感じるためには一定のエネルギーを投入して仲良くなっておかなければならないからです。もっとも近道は団体の中の小グループに入って活動することです。経験的に言いますと、この方法が人と仲良くなる最良の方法です。
ⅰ.ネットワークへの情報アクセス
ネットワークを作っていくための入り口としては様々な方法があります。自分に必要な人脈を特定したら、次にどのようにしてそうした人脈にアクセスできるかを考えます。良く使える方法としては、知り合いの手引き、直接手紙や電話で連絡する、ネットで調べてアクセスする、直接訪問するなどの方法があります。
ⅱ.社交への参加
いざ社交へ参加する場合には、自分を飾らず率直な態度で接することが効果的です。誰でもそうでしょうがやはり人間は人と会うと微に入り細に入り人物を観察評価するものです。ですから誠実・正直が最良の方針でしょう。
ⅲ.特定の人へのビジネス上のアクセス
もし必要な人脈の適当な候補者が見つかれば、その人が信頼に足るか調べてみる必要があります。そのためにはその人の人柄を知るあなたが信頼できる人に聞いてみるのが良いでしょう。信頼のおける人が信頼する人は概して信頼できます。ただ相性がありますからその点は良く検討することです。しかしビジネスでは友人や夫婦ではないのですから相性にこだわりすぎることは感心できません。人間の相互理解はコミュニケーションの絶対量に比例するとすれば、コミュニケーションの努力をしてその人の人となりや考え方を理解しようと勤めることが大事です。そしてもしお眼鏡に適ったら実験的に小さな仕事を依頼してみることです。こうして約束を守り品質が良く信頼に値することが分かればお付き合いを深めていけばよいのです。
最後になりますがこれらのネットワークはビジネスと人生を豊かにしていくためであり、手段が目的化して、社交の大海に飲み込まれて時間を掛けすぎないようにくれぐれも注意して下さい。
自社で試した実戦向きのツールや
資料を無料でご提供中
資料ダウンロードはこちらから
経営資源の限られた中小企業では、外部のネットワーク形成が重要となります。積極的に外部との交流に参加し、自分の眼で候補者を探すことが大切です。