M&Aは「儲けの源泉」
見極めることが大事
当社は兵庫県加古川市を起点として住宅を建築し販売する会社です。「あなたと創る家 WITH U MADE」をコンセプトとし、お客様の夢を叶えるため日々奮闘しています。当社は9年前、高槻市に本社を置きます住宅建材設備卸売会社の㈱イワイによってM&Aされ、私はM&A後1年ほどして社長に就任しました。
M&Aを前提にデューデリするときは、「儲けの源泉」つまり事業セグメント別に儲けのポイントを見極めることが大切です。この会社がどの事業でどれくらい利益を出しているのか、粗利取得の方法や固定費のまかない方を捉えることが大切です。中小企業が売却を考えるのは、その会社に後継者がいなかったり、将来の見通しに課題があったりと、何か理由があるからです。決算書だけでは見えない「収益の源泉」をきっちり掘り出すことが、その後の良いPMIにつながります。
私から見た三建の「もうけの源泉」は土地の販売でした。M&Aした年からさかのぼること10年間は、毎年不動産の利益だけで2億円出していました。創業者(前社長)はこの地域の出身者で、土地の売買に人脈と優れた能力があり、利益の生産性はものすごかったのです。土地の売買を除いたら、当時の利益は±ゼロどころかマイナス。私は利益の源泉がない状態で社長を引き受け、それが最初の課題でした。まずは売上高総利益と固定費、人員をもとに売上として必要な損益分岐点を数字で見える化しました。数字に根拠があれば人は行動を起こすからです。
経営は数字の見える化と
PDCAの管理が大前提
社長就任後の経営管理については、御堂筋税理士法人の小笠原先生のご尽力が大きく影響しています。私は前職で経営した全ての職場で先生から学んだことを実践してきました。小笠原先生との出会いは23年前です。現在当社会長の岩井が(株)イワイの社長に就任した頃で、私はメーカーとして㈱イワイへの営業を担当していました。イワイの担当をした5年の間に販売店の後継者向け勉強会を企画し、たくさん勉強させてもらいました。経営計画や財務指標の見方など、とてもためになり、おおいに小笠原イズムを学びました。
中小企業は社長の勘と度胸で運営しているようなもの。ところが、小笠原先生の経営計画数字をきちんと実践すれば、住宅販売に関しては素人の私でも経営判断ができるのです。M&A以前の三建は、経営数字を見える化できていませんでした。M&A後から私が就任するまでの1年間で小笠原先生が経営数字の管理をしてくださったあとだったので、ある程度、数字の見える化ができていたのです。会社の状況がしっかり見える化できていれば、何が問題かが見え、原因を探し出し、何に手を打てば良いかがわかります。私が就任したときの三建は、ちゃんと経営指標が設定されていました。これがなければ私は、絶対に経営はできませんでした。
会議では、見える化された数字を表(経営のコックピット)にして分析し、営業額、店舗提案残数、店舗受注件数、失注件数、受注情報、単価など、生産性の指標(目標管理)とPDCAで管理していきました。毎月、きちんと完工売上と受注売上、利益とコストがわかって月次決算ができることは重要です。数字が見え始めたら行動をどうマネジメントするかに移せるから。就任当時売上は33億円。右肩あがりに売上は増加し、今年は55億円になり経常利益も4.5%になる見込みです。
アフターM&Aの課題を収束する
経営理念の浸透
トップ(社長)がかわることによるメンバー(社員)の反発には、一番気を遣います。私は三建にきてすぐ、経営理念を根付かせることに注力しました。企業文化を根付かせるには、きちんとした理念が一番だからです。そこで、理念2つと行動指針をつくり、理念は毎日、朝礼で読んでいました。理念の浸透や意思の共有は時間がかかります。やはり三つ子の魂100までも。育った環境を変えるのは難しいのです。
また、日々のオペレーションの管理も、経営数字の見える化の次に難しかったことです。オペレーションが根付かない最大の要因は企業風土です。結果的に社長の話を理解し、考え方や思いに共感してくれた人が残り、その他は会社を去っていき風土が変わっていきました。
コックピット会議を通じた
経営ポイントの共有で行動力を加速
会議で一番見るのは、コックピット(利益や受注の予測)です。あとは部門別の利益やキャッシュフロー。まずは自社の立ち位置を明確にすることです。「遅れ」や「できていないこと」が見えれば、人はどうにかしようと努力するものです。それには「受注から引渡しまでの日数を284日から250日にすれば、回転数が0.26回上がり約1.3億円の利益が増えてくる」というような具体性が必要。何の指標もなく「頑張れ」と言われても行動のしようがないですからね。会議や業務のなかで、具体的な経営数字の見方や目標管理の仕方を日々伝えていて、その中の一つが上司と部下の1on1ミーティング。各部門長が実践してくれていて、従業員たちにも浸透していきていると感じています。
経営会議メンバーは社長の経営思考が共有できています。同じように思考できる人材の育成をサポ―トして頂いているのが小笠原先生。1か月に1回会議に出て、ほめたり怒ったり、気を引き締めて頂いています。気になる点をすべてチェックして、「これちょっと教えて」と先生が毎回みんなに聞いて、みんなで調べてきたり分析したり。毎回議長をかえて会議進行することも根付いてきていますね。
短期3年分の経営計画は、会議メンバーで合宿して丸2日考えます。ただ、なかなか新市場での新事業(新組織)の話にはならず、どうしても既存市場での既存事業の改善事項の話になってしまっています。この部分は本来、経営幹部がつくらないといけないのかもしれません。
アフターM&A、8年目。
既存社員を戦力としつつ
新規市場も視野に
住宅会社は営業と施工管理の両方がポイント。オフェンスとディフェンスのようなものです。私が会社経験として畑違いな分、スタッフのなかにそれぞれの強みを持った人がいればうまくいきます。当社であれば副社長のような、住宅会社経営に強い人がサポーターとしていてくれるのは心強いことです。プロとして職種を活かす人が近くにいてくれるということは、ありがたいことです。
現在、経営幹部は3名。社長は会社の方向(道筋)を考えることと、現有戦力を活かす方法を考えていかないといけません。担当者としてのプロパー社員は非常に有能ですが、今後は管理職も任せていきたいのでマネージメントを学んで欲しいですね。中途採用者はスカウト中心に管理職を採用していますが、中途採用者と既存社員との役割や扱いはバランスが重要です。
アフターM&A、8年目の悩みは、現状の組織や現市場を成長させるか、それとも新組織で新市場に目を向けるか、というところです。現在は現状の組織で、現市場を伸ばしていく戦略です。ただ、今回のコロナ禍やウッドショックで、それだけではいけないと感じています。
名古屋支店の創設は、新しい市場への進出でした。トップだけは執行役員が兼任で、現地に勤務する全員は名古屋で新しく採用した新組織です。オペレーションもすべて新メンバーで担当し、コックピットを使って営業会議をしています。6名体制で現在2年目。1年目から計画数字を達成してくれています。ビジネスモデルが確立できつつあります。このオペレーションも小笠原先生が大きく寄与して頂いています。その他エリアや商品はどうするか……。既存事業の深化をしながら、新規事業を深索することができれば、変化に直面しても組織は生き残っていけると確信しています。また小笠原先生に相談させていただこうと思っています。
会社名 | 株式会社 三建 |
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グループ会社 | 株式会社 イワイHD 安藤建築 株式会社 畑中工務店 株式会社 株式会社 イワイ 株式会社 イワイ物流 株式会社 アイルホーム 株式会社 ネクスト 株式会社 イワイテック 株式会社 ひまわり建設 |
本社所在地 | 兵庫県加古川市加古川町溝之口584番地 |
設立 | 1978年12月2日 |
代表者 | 川口 雅己 |
従業員数 | 64名 |
主な事業内容 | 注文住宅の設計、施工、販売、住宅リフォームの企画設計、施工及び請負、建築資材、住宅設備機器の販売及び輸出入、宅地の造成、分譲、造園及び土木工事の設計並びに施工、不動産の売買、賃貸、仲介及び管理業務、損害保険代理店業務 |
ホームページ | https://www.e-sanken.co.jp/ |