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御堂筋note magazine

Vol. 1

創業者と2代目の経営のちがい

一般には、創業者は『創生』のリーダーシップ、2代目は『守成』のリーダーシップ、それぞれ役割がちがうと言われます。『創生』とは、自ら事業を創り出していくことであり、『守成』とは、できあがっているものを守り、発展させ、永続させていくことです。では、創生と守成はどちらが難しいと問われたら、どう答えるべきでしょうか?それは難しさの差ではなく、必要とされる能力がちがうのではないでしょうか。

ではどのような能力のちがいなのでしょうか?創生に必要なのは、強力なリーダーシップです。創業とは文字通り、事業を創造する、つまり無から有を創り出すわけですから、それは当然でしょう。一方、守成は、創造した事業を受け継ぎ守るわけですから、必要なものはマネジメント能力、つまり管理能力です。

偉大な創業者に対して、少し萎縮している後継者も見受けられますが、決して2代目だからといって、創業者に対して劣等感を感じる必要もありません。むしろ、創業の能力とはちがう能力が、2代目には求められるところから、個性のちがいが力として発揮できていくのです。組織を築くことは偉大な仕事ですが、できた組織を永続させていくことは、それに勝るとも劣らない偉大な仕事です。創業者も、組織の存続については力を発揮できない場合もありがちです。ですから、創業者の築き上げた事業を、どのように未来へバトンタッチしていけるか、2代目の真価が問われるところです。

2代目つまり事業継承者には、さまざまな経験と知識のための訓練が求められます。まして急速な変化があたりまえの時代、変革の時代にあっては、2代目といえども単にマネジメント能力があるだけでは、とても事業永続の重責を担っていくことはできないでしょう。そこで、単に創業者は『創業』、2代目は『守成』ということではなく、創業と変革のために必要な能力の源泉、がリーダーシップであり、継続と健全性維持のために必要な能力の源泉が、マネジメント能力であると考えるほうが当を得ているといえるでしょう。

そのように考えると、2代目にも状況に応じ、創業者的な活動が必要な場面も出てくるわけです。たとえば、組織の成長・発展のプロセスを見ますと、一本調子で急成長をとげるということは非常にむずかしく、ほとんどありえないことがはっきりとしています。といいますのは植物の竹とおなじで、健全な成長と発展には、ぐんぐんと業績や規模を伸ばす成長期とその大きくなった組織・しくみを支えるための充実期が必ず必要になるからです。なぜなら人材としくみが、規模の拡大についてこないと、必ず問題が多発し、成長の阻害要因となるからです。成長期には果敢なリーダーシップが必要になりますし、充実期にはがまんのマネジメント能力が求められるでしょう。さらに新商品や新市場あるいは新規事業の立ち上げにはリーダーシップが必要ですし、既存事業の管理にはマネジメント能力の預かるところが大なのです。

次の表は、創業者と2代目についての状況や課題のちがいをまとめたものです。この出典は、山本七平氏の『「帝王学「貞観政要」の読み方」の守成・草創対立表です。『貞観政要』とは、中国の唐の時代に書かれた帝王学の書物で、著者は呉兢(670~749)という人です。貞観政要は則天武后の後を継いだ中宗に献じたものですが、良い政治のお手本を、『貞観の治』と謳われた時代を治めた名君、太宗に求め、太宗のあり方を通じて指導者の身の処し方を書いたものです。今日でもなお輝きを失わない古典の名著の一冊です。私たちもそこから、経営の承継者としての心構え、必ずしも守成のみならず、創生の精神をも学んでいく要があるでしょう。なぜなら、それは状況に対応して、どちらの心構えも求められる可能性があるからなのです。

- 創生/創業者 守成(維持)/2代目
状態 組織を作っていく状態 組織ができてしまった状態
大変さの性質 陽性:頑張れば成果が目に見える形で現れてくるという大変さ 陰性:毎日根気良く続けても、すぐ目に見える成果が現れてくるわけでない大変さ
困難さ 創業の時とはいわば乱世で、群雄が競い起こる。それを次々に攻め討って降伏させ、勝ち抜き勝負で平定しなければならない点で創生の方が困難。 天下を得てしまうと、驕りが出て志向が逸脱する。そして、支配者の無駄で贅沢な仕事は休止しない。国の滅亡は、常にこれによって起こる点では、守文の方が困難。
育ち 民間に成長し、情(真)も偽もよく知っている⇒破亡に至る者はまれ 生まれながらにして富貴で世の苦難を知らず⇒一族みな殺しにされるまでに至る
迷い/予言・迷信 人間は迷う。しかし、創業時代は目標がはっきりしている時は、この弊害が余り現れない。 前途がはっきりせず、どうなるのか明確でなく、不安にとりつかれると、人間は迷い、予言や迷信に惑わされる。
リーダーの資質 「偏信」を捨て、「兼聴」せよ。つまり、聞くべきことは聴くという態度が大切。 左記同様

上記のように創生と守成にはちがいがありますが、しかし事業に全責任を持ち、事業をめぐる環境の変化に対応して、常に市場の求めるものに焦点をあて、人心を掌握しつつ業績を挙げていくという基本的な役割にはなんら変わりはありません。

2代目には、創業者が苦労して事業を築いてきた時代を子供の眼を通して見つめ、親父の背中を見て育ってきたという人がたくさんいるでしょう。そういう意味では、実際に見てきたというほかの人たちには経験できない体験の強みを持っています。

経営は一種の総合芸術です。たとえば映画の監督や、オーケストラの指揮者にもたとえられます。そこでは多様な技量が求められます。たとえ中小企業といえども、経営者に課せられた責任は重く意識的な勉強もなく経営を担うということはできなくなってきています。

持ち合わせた体験の重さとそして経営者たるための学びが合わされば、経営者としての強みが築かれることでしょう。このテキストでは、これから経営者として、先代の跡を継いでいこうとする事業承継者のために、必要とされるものの考え方や、身につけておくべき経営の原則やスキルを伝えるつもりです。

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今日のまとめ

創生に必要なのは、強力なリーダーシップ。守成は、創造した事業を受け継ぎ守るマネジメント能力、つまり管理能力。

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