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御堂筋タイムズ magazine

人材育成

人材育成の“15%”ルール

Work Story Award 2019 「トップ企業の人材育成力賞」受賞

中小企業は試合ばかりで練習をしていない

人材が伸び続ける教育の"15%"ルール

このたび弊社の「人材育成の15%ルール」をまとめたストーリーが、これからの日本をつくる100の"働く"をみつけよう『Work Story Award 2019 トップ企業の人材育成力賞』を受賞しました。
 今話題の青年実業家&ベストセラー作家である審査員代表の北野唯我さまより、「僕ら審査員チームはみな実務家です。ハデな取組みや新しい取組みも、成果に繋がらなければ意味がない。御堂筋税理士法人さんの15%ルールは、ものすごく新しい取組みや派手さはないかもしれない。しかし、施策を信じて28年間実行し、業界平均の“2倍以上の一人当たり生産性”という成果につなげ、人事施策と生活の相関を示した点を高く評価させていただきました。」とのコメントをいただきました。この受賞を機に、弊社の「人材育成の15%ルール」についてご紹介させていただきます。
 
※Work Story Award及び一般社団法人at Will Work(主催者)についての
 詳細についてはこちらをご参照ください。

“知識”こそが、いいサービスを提供するための“仕入れ”である

 「御社のスタッフは成長角度が異常だ。一体何をしているんですか?」
私たちは税理士法人として、コンサルティングを通じてお客様のお手伝いをしていますが、お客様からたびたびこう聞かれます。その秘訣のひとつに、取り組んでいる「15%ルール」という施策があります。社内のメンバーには当たり前のものとして浸透していたため、2018年まで名称がありませんでしたが、あまりに税理士界隈から好評なため、社外の人たちにもわかりやすいように名付けたものです。
 15%ルールのコアとなるトレーニングも創業時から月に1度必ず行っています。15%ルールとは就業時間の15%、すなわち月間就業時間のうちの24時間をトレーニングに充てるというものです。15%の数字の根拠は、もともと製造業にいた当社の創業者が設定したもの。一流企業が能力開発に充てていた時間の平均値から由来しています。
 中でもSA(Solution&Accompany)トレーニングは私たちの経営理念である「経営の課題解決の伴走者」を育成するためのトレーニングです。顧客である経営者に寄り添うために必要な財務指標やマネジメントの知識だけでなく、倫理観や哲学、陽明学などの「人間力を高める教養」にまで踏み込んだ学習を行います。もちろん、トレーニングの内容は年々バージョンアップさせ、これまでは全員が同じ研修を受けていたものを習熟度別に分けるなどしてさらに精度を高めています。
 施策の根底にある考え方は「知識こそが私たちコンサルタント業の仕入れ」だということです。変化のスピードが早い現代。常に研鑽を重ねないと知識やスキルは陳腐化し、いいサービスを提供できないとの考えが私たちにはあります。忙しい税理士の世界では、1カ月の中で24時間も研修時間に充てていることが、社外のお客様からすると信じられないことのようです。
 それでは、業界平均の2倍の生産性を誇る御堂筋税理士法人の力の源泉となっている、15%ルールの全貌をお伝えしていきましょう。

全員が受講生であり、全員が講師である

SAトレーニングは、全員参加の研修を丸1日かけて行います。全員が参加できるように、年始に全員分のスケジュールを月に1日分押さえているほど底しています。トレーニングの内容は、経営者と対等の目線を持って話すための知識や人間力、教養を身につけるもの。たとえば、税務が改正されたタイミングでの知識習得や決算書の読み方から、論語などの東洋古典、デカルトやカントなどの西洋哲学に学習範囲が及ぶことも。こうした知識以外の「価値観的教養」も含めて学ぶカリキュラムにしたのは近年の傾向です。経営者と対等な目線を持つのに不可欠な要素だと判断したからでした。
 また、代表の経営理念を伝える意味合いもあり、代表が自ら講義することや、外部講師を招いて最新のIT事情やブロックチェーン技術、HRテックなどのトレンドを学びます。研修の内容は年々更新し、何を学びたいかのアンケートを取ったり、事務局が2日間かけて合宿を行い、次年度のメニューを議論したりして決めています。他にも、読書課題が出され、書籍の内容を全員の前でプレゼンしてもらうことも。全員が受講生であり、全員が講師であるというスタンスです。アウトプット前提で学習することで、学ぶ意識も変わってきます。
 
 もちろんうまくいっていることばかりではありません。現在メンバーは25名ほど。人数が増えて組織のメンバーが多様化してくると、全員を一同にそろえて学ぶことが難しい局面も出てくるようになりました。組織の多様化に合わせた制度設計に変えていくことが課題です。
 
いずれにせよ、目的を失わないことが大事だと考えて取り組んでいます。目的とは「付加価値を高めればお客様のためになり、ひいては生産性を高められる」ことです。そのために常にトレーニングし、大切なみんなの時間を使っています。そのため、社内からは「あの講義は意味があるんですか?」との厳しい意見も出ますし、それに対してちゃんと耳を傾けます。たとえ代表の講義でも、内容が薄ければ容赦はしません。スタッフは全員が講師に回る前提であり、経営者と対等になるとの想いで緊張感を持っているため「やらされ感」が少なく、目的を持って各自が主体的に取り組んでいます。

試合に臨むためのトレーニングは24時間にわたる

SAトレーニングのほかに、コックピット会議や1on1、勉強会、ロールプレイング研修、チーム別振り返りなどがあり、トータル24時間の研修になります。これを毎月行います。
 たとえば「1on1」。これも創業時から行っていて、メンバー同士で目標管理シートをもとに、半期ごとの振り返りを行います。目標管理シートは文字通り、各メンバーのやりたいことや目標をシートに落とし込んだ宣言文のようなものです。
 
 「コックピット会議」は、全員参加型の経営会議です。売上や目標、課題、計画をガラス張りにして全員でチェックし、経営陣から若手までが参加します。若手はファシリテーションを任され、発言を求められます。否が応でも経営者目線が培われる、若手の晴れ舞台でもあります。そのまま社外へパッケージとして販売しているため、商品開発の側面もあるのです。
 また「勉強会」は、自主的に学習に取り組む時間です。当法人の中には縦割りの組織を横串にする横断チームがあります。たとえばM&AやITソリューション、相続税などのチームに別れて勉強会やペアでのロールプレイングを行うなどします。
 
 これらの取り組みは、短期で目に見えて成果が出るものと長期で成果の出るものがあり、各時間配分の割合は見直すこともあります。SAトレーニングの論語の勉強などは長期的にじわじわと効いてくる施策だと考えています。また1on1は離職率の低下に、SAトレーニングとコックピット会議、ロールプレイングなどは生産性の向上に寄与しているものと捉えています。
 これらすべてが集まって、15%ルールの24時間研修になります。試合に臨むためのトレーニングとして毎月、継続して行っています。

生産性は2倍に。従業員満足度や人材採用、離職率の低下にも寄与

15%ルールの価値は、当社の採用がほぼ新卒のみだったころには気づけないものでした。中途採用のメンバーを増やすようになってから社外との違いを知り、価値に気づいたものばかりです。しかも完成形はなく、常に悩みながら改善を重ねています。顧客満足度だけでなく従業員満足度が向上して離職率が低下、社外へも評判が伝わって採用に困らなくなるなど人事面でもプラスに働いています。
 
 「中小企業は試合ばかりでトレーニングをしていない」これは中小企業の私たち自身が抱えてきた問題意識です。しかし私たちが行っているトレーニングの重要性は、社外にも自信を持ってお伝えできる、当社の好業績の秘訣だと自負しています。「月に1回、丸1日も研修はできない」との声も聞かれますが、トレーニングをせずに試合に勝つことはできません。
 
 トレーニングを積み重ねた成果として13年連続、増収増益を達成。一人当たりの生産性は1,852万円と、税理士業界の平均859万円(2018年時点)を2倍以上も上回っています。現在はノウハウの形式知化がさらに進み、私たちの顧問先企業の黒字化率はなんと84%超。日本の中小企業の黒字化率36.5%を大幅に超えています。
 また、従業員満足度と生産性の相関はさまざまなデータから明らかになっています。15%ルールの取り組みが社員一人ひとりのやりがいや組織の成長へとつながっており、ひいては生産性の向上に寄与していると、今では胸を張って断言できます。
 
 おかげさまで「経営で何か困ったら御堂筋税理士法人に相談したい」と、私たちは税理士法人であるにも関わらず人事などの面でもお客様から頼りにしていただいています。その意味では、経営者の伴走者としての役割を果たせているのではないでしょうか。

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