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御堂筋タイムズ magazine

事業承継

認知症が企業経営に与える影響を考える

経営者が認知症になり 、会社運営ができなくなる?・・・

まさか社長が?経営者の認知症リスクの課題と対策を考えてみましょう。
いつかのことではなく、今のうちからやるべき、事前対策を解説いたします。

経営者の高齢化について

令和3年度高齢社会白書によると令和2年10月1日現在総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は28.8%にもなっており、2021年2月5日の帝国データバンクの全国社長年齢分析によると社長の平均年齢60.1歳(調査開始以来初の60歳超)となっており年々社長の平均年齢は上昇し続けており70歳以上で現役の社長も珍しくなくなっております。
そして、高齢化の進展とともに、認知症の患者数も増加しており2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、65歳以上の6人に1人が認知症患者となります。
 
そこで今回は、認知症が企業経営にどのような影響を与えるのか、またどのような対策を検討しておくべきかをご紹介いたします。

認知症とは

認知症とは老いにともなう病気の一つで脳の細胞が死ぬ、または働きが悪くなることによって、記憶・判断力の障害などが起こり、意識障害はないものの社会生活や対人関係に支障が出ている状態(およそ6か月以上継続)を言います。
 
我が国では高齢化の進展とともに認知症の人数も増加しており、認知症の影響を受けやすくなる65歳以上というのは、企業経営において中核となる層とも重なります。

企業の経営における認知症の影響

経営者が認知症となることによって企業の経営に影響を及ぼす例として、下記のようなものがあります。
 
1. 中小企業の経営者が認知症となり契約を行った場合でも、締結時点でその契約は原則として有効と判断されます。その契約が企業にとって不利益となる契約であった場合には、その契約の取り消し又は変更をすべきでしょうが、契約時点において経営者が認知症であり「契約を締結できるだけの意思能力がない」状態であったことを証明する必要があるため非常に手間のかかるものとなってしまいます。
 
2. 経営者が一人で自社株式を100%持っている場合や、過半数以上の株式を持っている場合などには、株主総会を開催して何かを決議することが出来なくなってしまいます。
 
3. 代表ではない取締役についても認知症の方がいらっしゃる場合、役員報酬の否認リスクも伴います。
 
役員や株主が高齢の場合、早期の対策を実施されることをお勧めいたします。そこで次に経営者の認知症対策をお伝えいたします。

経営者の認知症対策

1.早期に株式を承継する

経営者の認知症対策として早期の事業承継(株式承継、経営承継)を実施することで対応は可能ですが、昨今の後継者不足の問題から後継者がいない場合や、株式の価額が非常に高額な金額になっているなどの事情から、株式についてなかなか承継できないというケースもあります。そのような場合、以下のような方法により対策をすすめることも可能です。

2.家族信託で対処する方法

経営者の保有する株式については、信託という方法で対処することもできます。信託とは、自分の大切な財産を、信頼できる人に託し、自分が決めた目的に沿って、自分や大切な人のために運用・管理してもらうという仕組みです。

活用方法としては、認知症になる前は自分(現社長)の指図によって受託者(後継者に)に議決権を行使させ、認知症になった場合は受託者(後継者)の判断によって議決権を行使してもらうことなどがあります。さらに、信託契約の中に、経営者が認知症になった場合や、亡くなった場合などの株式の承継方法、処分方法を個別に定めておくことも可能です。

3.属人的株式の設定をしておく方法

認知症リスクが高い年齢の経営者が多くの株を保有している場合、後継者が持つ株式の議決権を条件付きで増やすことで、認知症発症により経営が機能しなくなる事態を防ぐことができます。

例えば、一部の株式を後継者が持っている場合、事前にその株式を属人的株式としておき、経営者の判断能力が失われた際、後継者の持つ株式における議決権を数倍にする、など後継者の議決権が過半数となるよう定款で定めておけば、経営者が認知症となった際にも会社の経営を進めることができます。

もちろん、経営者に判断能力があるうちは、議決権も株式保有比率とおりなので、経営者が過半数の議決権を持つことになります。そして何かあった時には、後継者へとスムーズに議決権が移行することができます。

このように、属人的株式を活用することで、特定条件下でのみ指定した相手の議決権を増やすことができるので、経営者が認知症となった時の備えとすることができます。

※属人的株式・・・属人的株式とは、以下の3つの権利に関して、その持ち株数にかかわらず、株主ごとに異なる取扱いができる株式のことをいいます。
 1.剰余金の配当を受ける権利
 2.残余財産の分配を受ける権利
 3.株主総会における議決権
 
属人的株式を設定するにあたっては、特殊決議として総株主の半数以上、議決権の4分の3以上の賛成が必要とされます。
 
実際に経営者が判断能力を失ってしまった後では、打つ手は限られてきます。一方、事前に対策を行っていれば、経営者の想いに沿った対策を打ちやすくなり、対応がスムーズに進む可能性が高まります。
認知症などによる意思・判断能力の喪失は、いつでも、誰にでも起こる恐れがあることを意識して、対策を打っておくことが望まれます。

認知症対策を検討しましょう!

経営者の認知症対策は、選択肢も多く専門的な知識を必要とするため様々な分野の専門家の力が必要です。
弊社では、各士業をはじめとした幅広いネットワークの力でサポートさせていただくことが可能です。
 
事業承継コンサルティングチーム までお問い合わせください。

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