1. ホーム
  2. 御堂筋タイムズ

御堂筋タイムズ magazine

税務・会計

成年年齢引き下げに伴う税務への影響について

バトンを渡すルール

所得税の観点、相続税の観点からポイントを整理いたします。

生前贈与による早期の財産移転が可能となります

2022年4月より、民法改正により成年年齢が18歳に引き下げられます。今回は、成年年齢が18歳に引き下げられることに伴う税務に対しての影響について所得税の観点、相続税の観点から整理いたします。

1.令和4年4月1日より成年の年齢が18歳に引き下げられました。

民法上、成年年齢には以下の2つの意味合いがあります。

①一人で有効な契約をすることができる年齢
②父母の親権に服さなくなる年齢
 
つまり18歳、19歳の方は、親の同意を得ずに、様々な契約をすることができるようになります。一人暮らしのアパートを借りる、クレジットカードを作成する、ローンを組んで自動車を購入するなどができるようになります。

2.個人住民税への影響について

まずは個人住民税を簡単に説明させていただきます。
個人住民税は、1月1日現在に居住する市町村で課税される税金で、所得の金額にかかわらず課税される均等割と前年の所得金額に応じて課税される所得割で構成されております。所得税との違いは、当年分でなく前年分の所得に応じて課税される点になります。住民税の納税義務者に年齢制限はないですが、15歳未満は労働者として働かせることは禁止されているので住民税を払う必要はありません。未成年であっても16歳以上の場合は、一定の収入があれば住民税を払う必要があります。
住民税は一定の所得金額以下の人は課税されない場合があります。
パートの方で給与の収入が100万円の方の場合、住民税は課税されません。
また非課税の要件として1.生活保護受給者、2.未成年者・障がい者、寡婦、ひとり親で前年の合計所得金額が135万円以下(給与収入のみの場合は、204万4,000円未満)などです。
いままで19歳、20歳で給与収入が204万4,000円を超えなければ住民税は課税されませんでしたが、今回の成年年齢の改正により、100万円を超えた場合住民税が課税されることになります。

3.相続税・贈与税への影響について

令和4年4月1日以後の相続・贈与が起こった場合、相続税・贈与税の計算上、「20歳」を基準としている規定について「18歳」を基準とする旨、令和元年度及び令和3年度で税制改正されています。以下どのようなものに影響があるか見ていきたいと思います。

(1)事業承継税制に係る受贈者の要件について

 

事業承継税制、いわゆる非上場株式を一定の要件のもと後継者に贈与した場合に贈与税を猶予するという税制において、株の贈与を受ける者の年齢が20歳以上である場合に贈与税の納税を猶予できたが、今回の改正により18歳以上の者まで引き下げ適用を受けることができるようになります。

(2)相続時精算課税制度の適用年齢について

 
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の子・孫への生前贈与について、子・孫の選択により利用できる制度です。贈与時には贈与する財産に対して一般の贈与税よりも軽減された贈与税を一旦支払います。ただし、その後相続時に、その贈与財産とその他の相続財産を合計して計算した相続税額から、先に一旦支払った贈与税額を精算します。
この制度には2,500万円の非課税限度額があり、同じ父母または祖父母からの贈与の通算額が限度額に達するまで控除することができるため、通算して2,500万円までの贈与には贈与税がかからないことになります(ただし、相続時精算課税制度を利用した場合、贈与税の基礎控除(110万円)の利用はできなくなります)。
今回の改正により受け取る側の年齢が「20歳以上の子・孫」から「18歳以上の子・孫」となり相続時精算課税をつかって早期に財産を移転することが可能となります。

(3)贈与税の適用税率について

 

贈与税の税率は平成27年以降一般の贈与と親族への贈与で贈与税の税率について変更されました。親族への贈与の場合で20歳以上のものが直系尊属(つまり親、祖父母など)より贈与を受けた場合、特例税率により計算されることになっております。ただし、今回の成年年齢の引き下げ以後においては、贈与を受ける年齢が18歳以上と改められます。相続時精算課税と同じで早期に財産を移転することが可能となります。

(4)未成年者控除

相続人が未成年者であるときは、税金の負担を軽減するために一定の金額※1を未成年者控除として、相続税の額から控除してもらえます。

今回の改正により未成年者控除を計算する際の成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることにより控除額が減額されることになります。

4.まとめ

成年年齢の引き下げにおいて税務的に有利になる規定、不利になる規定などさまざまではありますが、財産を承継する点においては年齢が早まったため早期に財産を移転できる可能性が広がったともいえます。ただ、中小企業の株式移転にかかる税制のなかでも事業承継税制の贈与については、承継側の年齢が18歳に下がったものの、贈与の時点で会社の代表権を有している必要があります。この点については経営上18歳で経営権を担うことはかなりハードルが高いとも言えます。
今回の改正に伴う影響を、相続税対策の見直し、事業承継対策のリプランニングについての検討をおすすめいたします。

最近の記事