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御堂筋note magazine

Vol. 16

新規顧客開発は社長の仕事である

新規顧客開発が必要なわけ

ⅰ.企業の平均寿命

皆さん、企業の平均寿命はどれくらいだと思いますか?平均8年と言われています。アメリカのフォーチュン誌が発表する全米の売上上位100社の中で30年前も現在もランク入りしている会社は1割程度です。それくらい企業の栄枯盛衰は激しいのです。仮に企業の平均寿命が8年だとすると、1年間に全体の12.5%の会社が消えていくことになります。設立後3年以内に消えていく会社が多いことから、実感として実際の平均寿命は12~20年くらいではないかと感じます。とすれば年間8.3~5%の企業が消滅していくことになります。

このことは何を意味するのでしょうか?皆さんの会社にどういう影響を及ぼし、それゆえ皆さんは何をしていかなければならないのでしょうか?
それは顧客が消滅する分以上に新規顧客開発を行なっていかなければわが社はじり貧になるということを意味するのです。実感として新規開発したお客様の売り上げの比率が5%以上あれば、概ね売上を維持できているようです。いずれにせよ、この現実を見据えつつ、新しい顧客の開発がわが社の存続に必要不可欠な課題であることをしっかり認識して下さい。

ⅱ.現状の顧客分析をしてみる

さて、そのことをより一層はっきり認識するためのよい方法があります。それは現状の顧客構造を分析してみることです。まず下のような用紙を用意し、そこにわが社の売上(粗利順の方がよりよい)の多い順にお客様をリストアップしていきます。そしてそれらお客様の将来の存続可能性を、経営者の年齢、後継者の有無、収益と資本背景、顧客基盤や差別化の程度など経営力の点から評価していき、例えば3年後の存続可能性を検討していきます。そして現状のまま推移した場合の3年後のわが社の売上高を予測するのです。

こうして出した数字に皆さんはきっとため息を吐かれるでしょう。しかし、この表は日ごろ皆さんが漠然と感じていながらきっちりと向かい合っていない将来をあぶり出しているに過ぎません。未来は皆さんが直視するのを避けようと存在するようです。現在の売上と3年後の見込み売上のギャップの1/3づつの新規顧客を毎年開発していかなければ現在の売上は維持できないという起きる可能性の高い未来です。そこから皆さんの経営者としての決意が出てこなければなりません。つまり新規顧客開発を、年間売り上げの0%以上行なっていくのだという決意です。

得意先収益構造分析表

 

新規開発ができるひと

ⅰ.開発力とはなにか

「言うは易し、行なうは難し」というのが新規開発でしょう。新規開発の条件、新規開発力の条件とは何でしょうか?それを考えるには、自分が誰かと取引をしよう、この人から品物を買おうと決める要素を考えてみればよいでしょう。あなたはどのようなセールスマンとなら新規の取引に応じますか?

新規の取引を決める要件は次の2つです。

(1)その製品やサービスが自分のニーズを満たすことあるいは問題を解決すること

(2)その取引相手が信用できると確信できること

例えばあなたが新しい複写機のセールスに応対したとします。そのセールスマンがたとえ若い人であっても、新しい複写機の導入により機能が大幅にアップし今までよりもコストが大幅に削減でき、おまけにリース料は従来どおりであるような提案なら魅力を感じるでしょう。このことは売り込む製品・サービスの優位性があり、プレゼンの方法が確立して入れば、たとえ社長がセールスしなくても拡販の可能性があることを示しています。しかしそうでないのならば、そうしたプレゼンはする人の才覚にゆだねざるを得ません。

次に、その取引の相手が信用できなければ取引をしようという決断はできかねるのが実際です。しかし相手が信用に足る人間かどうかは本当のところ仲々わかかりづらいものです。それではどのようにして人間は信用をするのでしょうか?一番の好例は、誰か信用できる人が信用しているという場合です、つまり紹介でしょう。その他ブランド、社会的地位や資格といったものもあります。またその人がどこと取引しているかも判断材料です。さらにその人の身なり、しぐさ、態度、行動です。とくに挨拶や時間の観念、レスポンスなどは重要な点になります。

つまり、開発力とは、(1)顧客の問題解決をする智慧があり、(2)信頼に足る人となりを備えていることが要件になります。

ⅱ.中小企業においてはトップセールスが不可欠

翻って、中小企業においてそのような開発力を身につけた人間がどれくらいいるでしょうか?残念ながら、そうはいないものです。ということは中小企業においては新規開発は、経営者自らが自らトップセールスを行なうことで進めていかねばならないことを示しています。そこで皆さんは、新規開発は自分の仕事であると腹をくくって下さい。そしてイニシアティヴを取ってください。

もちろん、中には開発力のある社員がいることもあります。しかし中小企業で開発力があるような人は、自分で創業できる人ですしその可能性も高いといえます。もしそうした有為の人材をつなぎとめようとするならば、彼らがこの会社に留まりたいと感じるくらい魅力のある会社になり、彼らの自己実現の機会を与えられるようにならなければなりません。

ⅰ.チャネル

新規開発をどのように進めていくかは業種・業態によってさまざまでしょう。産業財の製造や流通といったいわゆるB2Bのビジネスから、B2Cの飲食や個人サービスビジネスまでの広がりがあり、また特定少数との継続取引か、不特定多数との商いといった違いもあります。

B2Cならば、集客のための宣伝、イベントといった販売のための技法から、最近ではONEtoONEマーケティングといってヘビーユーザーの囲い込みをいかにしていくかが重要な課題になっています。これらは特に購買履歴のあるお客様のアフターフォローやファン化に智慧の見せ所があるのです。

また当然の話ですがWebによるインターネット・マーケティングも不可欠の研究課題です。最近ではホーム・ページを持った会社も増えていますが、宝の持ち腐れのところが多いようです。それは目的が明確ではないからです。とりあえずホームページを作っておけでは話になりません。受注なら受注に焦点を絞り、ノウハウがないならしかるべき人とコラボレーションをして作り込んで行く必要があります。最近は情報をインターネットで検索する人が圧倒的ですから、ホームページはワールドワイドというより、身近なお客様との接点機会を提供してくれます。またホームページとリアルビジネスの接点機会の融合(いわゆるクリック&モルタル)を効果的に演出すべきです。

しかし下世話な話として、やはり今のお客様を通じた接点や新規開発の紹介可能性を大切にすべきでしょう。これらは、しっかりとリストを作りお願いをしていきます。またそれ相応のお礼やコミッションについても考えておく必要があります。

またある業種をローラー的に開発展開するのであれば、昔からなじみのあるローラー作戦で地域をしらみつぶしに見て回り潜在顧客の存在を観察し確認する方法があります。

さらに、シンクタンクやコンサルタント業者に頼んで新規顧客のリサーチをお願いすることも有効な方法ですが、この場合当然のことながら費用が必要になってきます。また同業者団体の名簿やハローワークなどによって名簿を手に入れることも一般的な方法でしょう。

またそれとは全く別に、休眠取引先の掘り起こしは大変重要な手法です。どこの会社でも、口座の稼働率というのは30%程度というのが一般的ではないでしょうか?ということは残りの70%はかつて取引をした実績がありながら何らかの事情で現在取引を中断しているお客様です。理由は様々でしょうが、全く一から新規開発を行なうことに比べれば、接触の敷居は低いといえます。また、訪問をして取引が途絶えた理由をお聞きするのもわが社の問題を把握するのに有効な方法です。新規開発に際しては必ず併用したい方法です。

ⅱ.仕事の内容や品質を分かってもらう

仕事の内容や品質を分かってもらうためには、ふだんの1つひとつの仕事を懇切丁寧にしておくことがなによりです。当たり前で言い古されたことですが、やはり製品に物を言わせることが、経営資源の乏しい中小企業では大事なことです。

そのためには、一瞬一瞬のお客様をはじめとした外部の人々との接点が大切です。この接点場面を、スカンジナビア航空のCEO、ヤン・カールソンは「真実の瞬間」と名づけました。彼は社員にその「真実の瞬間」において顧客の立場に立った対応を指示し、そのために必要な権限を現場に委譲しました。わが社も社員1人ひとりの行動の1つひとつが、一瞬々々にしてお客様からの厳しい視線と批判精神にさらされ、値踏みされ、評価され、感動をしていただけるのかはき捨てられ切り捨てられるかしているのです。このことを、口をすっぱくして説き、かなう行動を要求し、躾けて行かなければなりません。

また、クレームの対応やその再発防止、製品の改良を全員の参加で組織的に学び、飽くことなく継続していくことで他社を凌駕する製品サービスを実現していきます。

しかし、これらのことをお客様や新規開発の相手方に対して、目に見えるように示していかなければ分かりません。このためお客様に訴えたい点やプレゼンの方法をひとつづつ開発していくのです。
こうした活動は、後で述べる新製品開発と同じく、創造的で楽しい取組みですから全社員を巻き込んで、遊び感覚も取り入れてぜひ素晴らしいものにして行きたいものです。

ⅳ.どのようにすれば誰でも新規顧客開発ができるようにできるか

社長が新規開発から解放されるためには、社員に新規開発ができるようにしていかねばなりません。そのためには社員の教育が不可欠です。教育は社長の本務ですから、自らその任にあたり上の開発力の要件を身につけさせることが必要です。

また、当然に上で話した商品とサービスの優位性や魅力をビジュアルに示すためのツールをしっかりと作り込み、標準化していくことも併せて必要になってきます。
しかし何よりも価値を共有し、社員がお客さまに対しわが社の価値を自らの言葉で語れるようになるまで教育をしていくことが何よりも決定的な要件になってくるでしょう。

新規開発のプロセス管理

新規開発もやらねばならないことは分かっていても、ではその実現をどのようにすれば確実にできるのでしょうか?まずしっかり管理の土俵に乗せておかなければなりません。そして毎月定期的に活動状況をきっちりとレビューするのです。

活動状況のレビューは下のような管理フォーマットで行ないますが、そのポイントは未来管理を行なっていくということです。つまり過去に成果ではなく、現在の取り組み状況とその結末を予測し、それに対し有効な対策を決定していくことです。また新規開発のためのはっきりとした数字の目標が必要です。年間の新規開発件数や新規開発先の売上の寄与率などです。こうして会議において現状を分析・評価し、解決の手段をみんなで智慧を出し合い検討・決定していきます。

新規開発進捗管理表

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今日のまとめ

顧客開発ではその人が信頼できる人柄かどうかが重要であるため、中小企業においては新規顧客開発は経営者が行うべき仕事といえます。

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