●はじめに…
経営者の皆さん、そしてこれから創業を志している皆さん、こんにちは。小笠原士郎です。
このレポートは私が所長を務める税理士事務所で提供している、経営・管理戦略セミナープログラムの中から要点を抜粋して、これからの経営者に求められる能力やスキル、そしてもしそれが不足している場合にはどのようにしてそれを補うかという手法についてお話ししています。
全5回のプログラムの、今回は第四話にあたります。
前回までに「経営企画書の重要性とその書き方」について説明を終えていますから、今回初めてこのレポートをお読みになる方は、「面白い」と思っていただけたら是非最初から全5回を通読してくださるようお勧めします。
もちろん今回から読み始めても、ちゃんと理解できるよう一話読み切りにしてはいますが、膨大なカリキュラムの中からこれ以上削りようがないというところまで濃縮した全5回ですから、一話も読み落としのないようお願いします。
●名経営者になるコツ六か条
【1. できる部下には一貫した事業をやらせて社長は新市場・新製品に注力できる環境を。】
第二話で、「経営者は考える時間をつくりなさい」というお話をしました。
一般に、時間に追われる経営者はなにもかも自分で直接やろうとし過ぎる傾向があります。
アメリカの企業では組織がフラット化し、トップは優秀な部下に権限をどんどん委譲して責任ある仕事を任せます。
仕事が人を育てるのです。
ソフトバンクの孫社長は、目をつけた部下は社内のあらゆる部署をたらい回しにしたといいます。
営業のエキスパートが突然経理に回され、半年後には販促に回される。
こうすることで事業全体を見渡せる視野の広い部下が育つのです。
経営者に近い視点を持つ部下であれば権限を委譲することも怖くはないでしょう。
また、ひとつの事業単位で権限を委譲するのもトップが自分の時間をつくる良い手段です。
そうすることで部下が増長し造反を企てることが心配だという経営者は、自分の器に甘んじた従来の経営を続けるほかありません。
本来の経営者は、権限委譲で生まれたゆとりの時間を経営戦略、あるいは新市場や新商品の開発に振り向け、経営手腕を存分にふるってより強いリーダーシップを発揮することができるはずです。
【2.経営数値を社員に情報公開する。オープンブックマネジメント(OBM)三つの条件】
会社の経営数値を社員に公開する事を「オープンブックマネジメント(OBP)」といいます。
是非経営者にお勧めしたいのですが、これには三つの条件があります。
一つ目は、帳簿を公開すること。これで公明正大な会計が行われていることを証明し、社員の信頼関係が強化されます。
二つ目は、社員に経営数値のリテラシーを身につけさせること。折角情報を公開したのに、その数字が何を意味するか読み取れない部下ばかりでは困ります。
三つ目は、社員が経営数値と自分の職務内容との関係性を見出し、「自分がこの数字を見てなすべき課題」を理解できるような教育を施すことです。
勿論、全社員に何でもかんでも公開すればいいというわけではありません。
機密保持の問題もあるし、幹部だけが知っておくべき情報もあるでしょう。
要は社長の指示通りロボットのように従う部下でなく、自分で状況判断が出来る部下を育てなさいということです。
例えば、一人の営業マンがいたとします。
彼が経営数値を理解できるようになると、得意先のバランスシートや決算書類を見ただけでおよその経営状態を見抜くことができます。
また、「営業マンは商品を売るだけが仕事だ」という甘い考えを引き締めることができます。
というのは、実は会社のお金のうち、売掛金というのは「社外に貸し出しているお金」なのです。
これが理解できただけで、いかに売掛金を早く回収しなくてはいけないかという回収責任の重要さが身にしみてわかるというものです。
同じ理由で在庫管理にも敏感になります。
バランスシートひとつが読めるだけで、「いかに無駄な買い物をせずに済ませるか、よそに貸したお金が返ってこないとどれだけ困るか、いま必要でないものを買って寝かせているとどれだけ損か」といった家計簿に近い感覚で会社の経理を理解でき、おのずと自分の役割を明確に認識するようになるでしょう。
【3. いい右腕・チームを育て、自分も数字に強くなる。】
経営者というものは意外に経営数値に疎い方が多いのです。
というのは、独立して起業するような人は経営の専門家よりも、営業畑や製造畑で突出した能力を持つ人が多いからです。
そういう経営者は「人間大好き人間」か「ものづくりはまかせとけ人間」に大別できるようですが、経営者として一番重要な能力は前にもお話した経営戦略とマネジメントであって、そこがちゃんと出来ていないと経営者本来が持つ長所まで潰してしまいかねません。
そこで、経営者自身も経営数値を読む訓練を相当にしなくてはいけませんし、良き番頭役、そして手前味噌ではありますが、我々のような外部の専門家の協力が不可欠ということになります。
理想的なのは経営幹部(経営者、専務、経理責任者、営業責任者、生産責任者)5人程度のチームで経営にあたることです。
3人や6人というケースもあるでしょうが、だいたい5人前後が一番チームとしてよくまとまる人数のようです。
【4. 切れる経営者は顧客のニーズを知っている。】
経営戦略に先立って、顧客のニーズを知らない会社の商品やサービスが売れるわけはありません。
ニーズを知る手段としては、顧客に対して定期的にアンケートをとったり、直接「なにかお困りのことは?欲しいものは?」といった質問をぶつけたり、顧客の行動を観察するといった方法があります。
形式的なアンケートを繰り返すだけでニーズが分かると思ったら大間違いですし、顧客に質問してもなかなか率直な意見は返ってこないものです。
また顧客自身が気づいていない潜在的なニーズというものもあります。
そこで、経営者が自分で直接市場や顧客を観察するという行為も重要なのです。
【5. 己を知り、敵を知る。マクロとミクロ、二つの観点を持て。】
自社のビジネスを取り巻く環境は常に変化しています。
現在は国際経済の時代ですから日本国内だけの変化を見ていては先が予測できません。
アメリカやヨーロッパ、中国でいま何が起きているかといったマクロな視点が必要です。
そして、自社の属する業界の変化や自社の変化などの競争環境に敏感であることは必須でしょう。
マクロとミクロ両方の観点から変化を捉えなくてはなりません。
また、変化にも好不況などの循環型変化と、規制緩和などによる構造的変化があり、この変化が一時的なものか不可逆なものかといった見極めも重要です。
【6. 5つのフレームワークで自社を分析せよ】
企業戦略の立案の際に、「SWOT分析」という手法を使うことがよくあります。
これは、組織の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの軸から評価する手法ですが、我々はさらにこれを突き進めて「トップ(経営者)」「マーケット(市場)」「生産(ものづくり)」「組織開発(ひとづくり)」の5つのフレームワークでその会社の強みというものを個別に分析し総合判断します。
世の中のニーズの変化はコントロール不可能ですから分析して対応するだけですが、自社の強み・弱みは知ることでコントロールが可能なのです。
一番効率的な経営戦略は、自社の強みを世の中のニーズにすっぽりと当てはめ、弱みは克服するか、あるいは強みに逆転できるチャンスを探します。
このシリーズでしばしば引用する経済学者のドラッガーに「課題を管理可能な数に絞り込め」という言葉があります。
この5つのフレームワークであればほとんどの企業の課題を網羅しつつ5つに絞り込むことができるのです。
●第四話のポイント…
・名経営者になるコツ六か条
1. できる部下には一貫した事業をやらせて社長は新市場・新製品に注力できる環境を。
2. 経営数値を社員に情報公開する。OBM三つの条件
3. いい右腕・チームを育て、自分も数字に強くなる。
4. 切れる経営者は顧客のニーズを知っている。
5. 己を知り、敵を知る。マクロとミクロ、二つの観点を持て。
6. 5つのフレームワークで自社を分析せよ |