●はじめに…
経営者の皆さん、そしてこれから創業を志している皆さん、こんにちは。小笠原士郎です。
このレポートは私が所長を務める税理士事務所で提供している、経営・管理戦略セミナープログラムの中から要点を抜粋して、これからの経営者に求められる能力やスキル、そしてもしそれが不足している場合にはどのようにしてそれを補うかという手法についてお話ししています。
全5回のプログラムの、今回は第三話にあたります。
今回の中心は「経営企画書の書き方」ですが、前二話で「なぜ経営企画書が必要なのか、その重要性」について説明していますから、今回初めてこのレポートを読まれる方は改めて前二話をお読みいただくとよろしいでしょう。
順番よりも、全5回すべてを読むことが大切です。
膨大なカリキュラムの中からこれ以上削りようがないというところまで濃縮した全5回ですから、一話も読み落としのないようお願いします。
●まず「数値目標・具体的手法・期限・担当者」を決めろ!
ある程度経営者として会社のトップを勤めていれば、本来やるべきことは見えてきているはずです。
「本当は、ああしなきゃいかんのだかなあ…」「これさえ出来れば、いい方向に向かうのだが…」という思いは経営者誰しもが持つ思いでしょう。
しかし、悲しいかな経営に悩む経営者は、「その思いを実現させるプロセスの進め方を知らない」のです。
「What」は分っているけれど、「How?」が分らない。
その解答を見つけてもらうのが、今までに何度かお話した「経営・管理戦略セミナー」のカリキュラムなのです。
私はいくつもの企業の経営会議に招かれて、オブザーバーとしての意見を求められることがよくあります。
そこでよく目にするのは、議論がやたらと空転して時間ばかりが経過し、なにも具体的なことが決まらないというタイプの会議です。
発言者は一応建設的な発言をするのですが、一般論や正論を並べて皆がうなづいているばかりでは会議の体をなしません。
そこで私はつい「それは良いアイディアですが、誰が実行するんですか?」「いつまでに実現するんですか?」と質問すると、黙り込んでしまう。つまり「自分がやってやる!」という当事者になるハラをくくってないから、第三者の意見としての空論を並べるわけです。
我々のセミナーでは、最初に「明日から、会社をどう変えますか?」と皆さんに問いかけることからスタートします。
各社各様、さまざまな「やるべきこと」が課題としてあがってきます。
この課題をスムーズに出せないようでは、経営者として問題があります。
同時に経営上の「数値目的」も設定します。
「こうなったらいいなぁ…」という希望値ではなく、「このように戦略を進めればこの数値が達成できる」という確実な数字です。
それが設定できたら、次は担当者の決定です。
「この課題については、何部の誰が担当者とし、その上司を責任者とする」「来期末までに新規客を何件獲得し、売上げ目標をいくらとする。その開拓方法はこうする」といった、時限を切っていつまでにどのレベルでどう実現するかという明確な定義を行うことが必要です。
すなわち、「腹をくくる」ということですね。
計画を明確に定義できないのは覚悟が不十分で、なにか計画の途中で不都合が起きたら計画を実現できない言い訳にしようという甘えがあるからでしょう。
「目標を達成できないかもしれない問題点を積極的に、時限を定めて必ず克服する」という強い決意がなくてはきちんとした経営計画とは言えないのです。
経済学者のドラッガー(第一話で説明)は、「具体的な目標数値と期限のない計画は単なる希望の表明に過ぎない」とバッサリ斬り捨てています。
セミナーでは計画に漏れのないよう、計画書のフォーマットとして我々が開発した独自のツールを使用しますが、計画書の細かな様式にとらわれる必要はありません。
「数値目標と、それを達成するまでの期限。それを達成するための具体的な方法。それを遂行する担当者と責任者」が誰にでもわかるよう「明文化されていること」が何より重要で、それさえ出来ていれば、立派な経営計画書と呼ぶことができるでしょう。
●三重のチェック体制で実行管理を完璧に。
前項の要領で出来上がった計画を「絵に描いた餅」に終わらせないためには、堅実な実行管理が必要となります。
この実行管理をスムーズかつ確実に遂行するのが、三段階に渡るチェック体制の確立です。
この三段階のチェック体制を、それぞれ規模の大きい順に「全体チェック」「テーマチェック」「セルフチェック」と便宜上名称をつけて呼ぶことにしましょう。
まず、一番身近なセルフチェックから説明します。
これは文字通り、自分に課せられた課題の進行状況を月ごとに自分でチェックする習慣です。
半期なら半期を六等分し、月ごとの目標や課題の消化具合を確認し、反省やネジの巻き直しをするものです。
これは経営者から新入社員まで、全員一人一人が行います。
そして、月ごとのセルフチェックの結果を持ち寄って全体会議を行います。
これは、個々が行ったセルフチェックの結果を集団で客観的に評価し、確認する作業です。
ここで、「他人との競争」という意識が発生します。
業績を伸ばした者は褒められ、問題をなかなか克服出来ない者は激励を受けます。
単に「がんばれ」というだけでなく、問題解決のためのアイディアの交換をする場でもあります。
こうして全員のモチベーションアップを図り、なおかつこの全体チェックの動向を把握することで経営者は現在の自社の「流れ」というものをつかみ、経営戦略全体の進捗状況を実感することができるのです。
この場合、目標達成率だけを問題にし、成績の悪い者をつるし上げるだけが目的のような会議にしてしまうと全体のモチベーションがダウンして組織が萎縮してしまいます。
あくまでも「問題の共有とモチベーションアップ」が目的であることを経営者は忘れてはなりません。
そして、半期に一度は「テーマチェック」を行います。
これは、全体会議とは違い、テーマごとに「担当者と責任者」が直接、入念かつ精緻に目的達成が出来たかどうかを検証するという重要なチェックです。
例えば営業マンであれば直属の上司とこの半期を振り返って売上高や新規開拓件数が目標数に達したかどうか、数値達成だけでなく、手法などについても振り返って反省や検討がなされなくてはなりません。
直属の上司は自分の掌握するチーム全体の目標達成率を営業の責任者と検証します。
そして営業の責任者は経営者と検証作業を行う…というように、会社組織の末端からトップまでバトンリレー形式で「目標が達成できたかどうか、出来なかったとすれば、どのような問題が解決できなかったのか」という情報を順送りにすることで、経営者の手元に自社の全ての情報が集約できるというシステムが完成するのです。
この情報が精緻かつ網羅されていれば、次期の経営計画はより精度が高く高次元なものとなるでしょう。それを10年も繰り返せば立派な企業文化として定着し、何物にも換えがたい貴重な知的資産となります。
明文化された計画と厳密な実行管理。まさしく「かくのごとく記録し、かくのごとく実行せよ」という言葉どおりに経営改革を進めてゆけばよいのです。
●第三話のポイント…
・経営計画書に必要なのは「数値目標・具体的手法・期限・担当者」である。
・具体的な数値目標と期限が設定できないのは、覚悟が不足している場合だ。
・「全体チェック」「テーマチェック」「セルフチェック」の三重のチェックで実行管理を。
・セルフチェックで自己のネジの巻き直しと反省を。
・全体チェックで競争心とモチベーションアップを。
・テーマチェックで目的達成度を査定せよ。
・計画と実行の積み重ねが企業の知的資産を育てる。 |