●はじめに…
経営者の皆さん、そしてこれから創業を志している皆さん、こんにちは。小笠原士郎です。
このレポートは私が所長を務める税理士事務所で提供している、経営・管理戦略セミナープログラムの中から要点を抜粋して、これからの経営者に求められる能力やスキル、そしてもしそれが不足している場合にはどのようにしてそれを補うかという手法についてお話ししています。
全5回のプログラムの、今回は第二話にあたります。
初回のレポートを読み損ねた方は初回から通してお読みいただいても結構ですし、今回から読み始めて、後で初回を読んでいただいても結構です。
順番よりも、全5回すべてを読むことが大切です。
膨大なカリキュラムの中からこれ以上削りようがないというところまで濃縮した全5回ですから、一話も読み落としのないようお願いします。
●人間には悪しき行動パターンがある
経営者といえども人間です。
人間が明確な計画を持たないで仕事にあたるとき、必ず陥ってしまう悪しき行動パターンがあります。
いまここに、「1. 重要かつ緊急に処理しなくてはいけない仕事」、「2. 緊急に処理しなくてはいけない仕事」、「3. 自分がやっていて気持ちいい仕事」があった場合、あなたならまずどれから手をつけるでしょうか?
ずばり、1、2、3の順に対応すべきです。
誰でもわかる問題ですが、現実にそれが実行できている方は強靭な意志の持ち主でしょう。
現実には多くの人が3、2、1の順に手をつけてしまうのです。
「やらなくてはいけない問題が山積みだが、とりあえず、手のつけやすい仕事をやっている」という経験は誰にでもあるでしょう。
得てして人生とはその繰り返しに陥りやすいのです。
そしてそれが365日繰り返されると一年が経過してしまいます。
そして、どうしようもなく問題が差し迫ってきたときに、ようやく現実を直視せざるを得なくなります。
それで仮に問題がなんとか片付けられたとしても、また次の問題が差し迫ってくるまで漫然と待ち受けているようなら、いつか「出たとこ勝負」で対応できない問題に会社は潰されてしまうでしょう。
「明日は今日と違うんだから、明日のことは明日考えよう」という発想ではとても経営者とは言えません。
むしろ、新たな問題が表面化する前に予測して迎え撃つくらいの攻撃的な姿勢が必要です。
問題に追われるのではなく、問題になりそうな要素を潰してゆきましょう。
丁度ラグビーのボールが敵から敵にパスされてゆくとき、次にボールが渡るのはどの選手かを予測して早め早めに潰しに走らねばならないのと同じです。
ボールを持った敵を後ろから追いかけているようでは、とうてい試合=ビジネスに勝つことは望めないのです。
●経営者の最重要な仕事は戦略構想だ
経営者にとってもっとも重要かつ緊急な仕事はなんでしょう。
社員のまとめ役ですか?資金繰りですか?お得意先とのパイプづくりですか?
確かにいずれも重要な仕事です。
しかし最重要な仕事をひとつ挙げろと言われたら、「それは経営戦略だ」と即座に答えられなくてはなりません。中小企業の社長は「そんなことを言われても、大企業ならいざ知らずウチのような規模では社長の私が何でもやらないと仕方ありません」と言い訳される方が多いのですが、経営者の役割に会社の規模は関係ありません。
むしろそう言い訳しながら、「自分が何でもやっている。俺は働き者でやり手だ」と自慢したげな雰囲気さえ伝わってくることがあります。
勿論働き者でやり手なのは大いに結構ですが、概ねそういうトップが座っている会社には明確な中長期戦略といったものはありません。
前述の場当たり経営で、この先具体的にどう会社を運営してゆくのかというビジョンに欠けているケースがほとんどです。
まず、経営者たるもの何を差し置いても経営戦略の構築を優先しなくてはなりません。
第一話でお話したように、現代は経済的な乱世の時代です。
調整役のトップで乗り切れる安定成長期とは違うのです。
雑務の合間合間にふと考えるような大雑把な経営戦略ではなく、情報を収集・分析し、自社の置かれた状況や業界市況を把握し、磐石の中長期的な経営戦略を立てようとすれば相応の時間が必要となるでしょう。
まず、その時間を作りなさい。
なにを差し置いても経営者には時間が必要だということを強く申し上げておきます。
具体的な時間の作り方については、第四話でお話しましょう。
●私が「経営・管理戦略セミナー」を始めた理由
私は現在税理士という仕事をしておりますが、この世界に入る前、ある大企業に勤めていた時代があります。
その会社ではさすがに大企業だけあって、半期ごとにちゃんと社員に経営方針を発表するのですが、社員の大半が、会議が終わるとすぐに方針書をゴミ箱に捨ててゆくのです。
ゴミ箱には配られたばかりの方針書が山積みになって溢れています。
捨てる社員を叱るのは簡単ですが、「社員がなぜそのようなことをするのか」に思いの至らない経営者は失格でしょう。
理由は極めて簡単です。
経営計画と、社員の意識が乖離しているからです。
なぜ社員の意識が離れているかというと、誰の目にもその経営方針が「絵に描いた餅」であることが一目瞭然だからです。
さらに踏み込んで、どうしてこのような乖離が起こるのかを説明しましょう。
私はこの大企業を辞職して税理士の道に進んだのですが、社外の人間の立場として経営者に接するようになると、経営者の孤独と苦悩の構図が客観的に見えるようになってきました。
大半の経営者は、経営者としての特別な教育を受けているわけではありません。
中小企業の経営者でMBAなどを持つ人はほんの一握りでしょうし、持っていたところで、それは「自社の経営」にそのまま使えるノウハウではありません。
経営者は独学で「自社の経営法」を編み出していかなくてはならないのです。
経営者はみな、そこで悩みます。
自分に経営上の問題を解決するノウハウがなく、腹を割って相談できる相手もいない。
よく「経営者の孤独」などといいますが、あれは本当です
。いかに腹心の部下であっても、言いたいことを何でも言うことは出来ませんし、苦悩や気持ちも完全にはわかってくれません。
このような孤独な社長が作った経営方針が社員と乖離するのは当たり前でしょう。
そこで私は、「心ある経営者のよき理解者・助言者になりたい」と、当時のボスの承諾を得て経営全般の勉強を始めました。
税理の専門家としての助言だけではなく、私が携わった多くの会社で客観的に学んだ経営ノウハウや問題解決の手法をもとに、経営者の相談役を勤めたり、さまざまな事例のアドバイスをしてあげるようになっていったのです。
そこで積み重なった成功事例が、現在我々が「経営・管理戦略セミナー」と題して行っているプログラムの基礎となってゆきました。
●経営計画とは問題を共有することと実行することが必要だ。
私が新しい会社を訪問するとき、経営者にまず質問するのは「経営計画書はありますか?」ということです。
たいていの場合、計画書自体は存在します。
その計画書を拝見するとき、チェックするポイントは、「経営上の問題を、経営者と社員が共有する形で捉えられているか?」、「過去から現在に至る経営計画がキチンと実行されているか?」というニ項です。
この二つが守られていれば、その計画書が「絵に描いた餅」になる心配はありません。
では、そのふたつのチェックポイントがなぜ重要なのかを掘り下げながら、次回は具体的に経営計画書の書き方について具体的に説明してゆきましょう。
●第二話のポイント…
・人間は、重要なことほど後回しにしたがる悪しき習慣がある。
・問題に追われるな。問題の要素を先回りして潰してゆけ。
・経営者にとって最重要な仕事は経営戦略。戦略を練る時間を死守せよ
・孤独な社長の経営戦略は社員と乖離した「絵に描いた餅」である。
・経営計画は、「問題の共有」と「計画の実行」が重要。 |